国会審議とは別に、経済財政諮問会議、規制改革会議、財務省・財政制度等審議会などで、社会保障問題が検討されている。一般歳出の50%を越える莫大な予算であり(GDPに対する税収が少ないために相対的に社会保障費の割合が多くなっていることもあるが)、国民生活に直結する問題であるから多くの会議で検討されることは当然である。
今後の日本をマクロで考えてみると、高齢化のさらなる進行と総人口・生産年齢人口の減少、非正規職員の増加等々、今後の日本の税収増加が期待できない状況であり、今後の社会保障をどのようにするのかは大変に重大な問題である。高額所得者の優遇税制を見直し税金の再分配機能を改善させ、さらに大企業の優遇税制を見直し莫大に抱える内部留保を活用するなどの対策を講じることなどが考えられているが、なかなか実効性に乏しい。
しかし、私たちが社会保障の充実に大きな声を上げ続けることは必要である。社会の格差が広がり続け貧困層が増大することは、国内の秩序が不安定になり安心安全な社会が脅かされることになる。年金だけでは生活できない、必要な医療・介護が受けられない、十分な教育が受けられない、子育てや介護のために離職せざるを得ないなどの事態を最小限に抑える政策を求めていくことは今の日本に必要であり、今後の日本のためにも必要なことである。
年金問題はマクロ経済スライド方式でかなりの国庫負担削減効果ができているようであり、各種会議においては、医療保険や介護保険の公的給付範囲の見直しが主に検討課題として挙げられている。たとえば医療保険においては、・先発医薬品の保険給付額を後発医薬品価格に基づいて設定する、・市販品類似薬(湿布、漢方薬、目薬、ビタミン剤、うがい薬)の保険給付外し、・受診時定額負担・保険免責制の導入、・入院時の居室代(光熱水費相当)の自己負担化、・70歳以上高齢者の高額療養費制度の見直し等々。介護保険においては、・軽度者に対する生活援助の原則自己負担化、・要支援1・2の給付をすべて地域支援事業化、・福祉用具貸与・住宅改修負担割合の引き上げ等々である。
この程度の負担は今後の日本を考えるとしょうがないのかな?と思えてしまう内容であるが、相対的貧困層の増大が危惧されるこれからの時代において、収入の少ない家庭には支援策が必要であり、社会保障の充実もこの人たちへ多く向けられる政策を行うことが本当の効率化ではないのか。
地域における医療および介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(医療介護総合法)も、社会保障費の増大を抑制するためのものである。大きな力が働いて社会保障の充実が崩され続け、その速度を加速している。経済大国日本を求め続けるのは生産年齢も総人口も減少していくこれからの日本では不可能ではないのか。幸せを実感できる社会保障充実の福祉充実国家を求めることに向かうべきではないだろうか。
(会長 藤戸 好典)
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