HOME » 協会新聞 » 20170415 個性を大切にする医学界に

バックナンバー

 

わたしたちの主張
平成29年4月15日

個性を大切にする医学界に

 生まれた頃から、目立ちたがり屋で、とにかく人の関心を引きたかった私は、よく「屁理屈」をこねては両親を困らせたものでした。親の言うことは聞かず、自分の意見が通らないとすぐに腹を立て、本当に困った子供であったと自戒の念を込めて幼少時を振り返る今日この頃です。自分が親になってみると親の気持ちがよく理解できるのですが、幼少時には、親の気持ちなんぞ知ったことではありませんでした。
 その私が、辛うじて医学部に合格して医学の道を志すことができたのは、医師である父の存在が大きかったと思います。親にしてみれば、自分の子供は、他の子供たちと同じように、大過なく育ってほしいと思うのでしょうが、私の場合は、どこに行っても目立つので、両親の苦労は大変なものだったと思います。その私がこうして「佐賀」で糖尿病の診療に携われるのは、今まで私をご指導していただいた多くの方々のおかげだと思っています。特に佐賀での活動では、多くの先生方にお世話になっています。そして、私の個性を尊重していただけている?ことを大変、うれしく思っています。
 ところで、昨今の医学界の話題の一つに「新専門医制度」があります。そのプログラムを見てみると、私は、このプログラムを最後までやり遂げる自信はとてもありません。なぜなら、私の幼少時のもう一つの一面は、「不器用で体力がないこと」だったからです。その研修プログラムですが、不器用である私は、一つの検査手技を習得するのに他の研修医の20 5倍の時間が掛かるうえ、いまだに習得できていない手技もあります。その上、体力が無かったので、カルテを書くのも遅く、よく指導医の先生を困らせたものでした。また、外科を研修すれば、手術に立ち会うことは、とても体力的にできなかったでしょう。
 内科医として最低限度の臨床経験を積み、技術を習得することは大切なことかもしれません。そして他科のことを知っておくことも、将来とても役に立つことでしょう。
 しかし、研修を受ける医師が、必ずしも皆、健康で体力もあり、優秀というわけではありません。現実に私のように、前期の研修にとても耐えられそうにない医師もいると思います。私がこの制度で一番危惧するのは、この研修を必ず受けないと医師のキャリアアップに繋がらないのではないかということです。確かに研修制度ですから、標準的な研修医を対象としたプログラムなのでしょうが、臨床医をやっていく上で、この研修が必須となると、いかがなものかなと感じています。車の運転免許に例えると、すべてのドライバーにマニュアルの運転の研修を課しているように私には思えてなりません。オートマチックも認めてほしいと思っています。
 また、この「新専門医制度」では、研修のプログラムや制度の論議がさかんですが、研修医を指導する医師への配慮が不足しているのではないかと思っています。私が研修医を指導していた頃は、生活のため、他の病院に日勤や当直に行かなければならず、自分の外来をこなしながら、入院患者も受け持って、学会発表もして、その上、研修医の指導も加わってと、とても大変で、その待遇は今も変わっていないようです。ぜひ、指導医の待遇の改善も論議していただきたいと思います。
 そして、それぞれの医師が「個性」を生かせる医学界になってほしいと願っています。
  (理事 今村 洋一)

●お問い合わせ ●リンク